オーストラリア少年が感じた日本☆インタビュー
福島の娘カレンが、ボーイフレンドのジェイデン君を連れて、10日間ほど日本を旅してきました。
ジェイデン君は生まれてからの18年間、生まれ育ったオーストラリア・クイーンズランド州から出たこともなかったそう。
飛行機に乗るのも初めて、もちろん、初めての海外旅行です。
そんなジェイデン君に日本の印象について、インタビューしてみました。
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Q) 日本に興味をもったきっかけは?
小学校の授業で、日本の文化について調べたりしたときから、日本の歴史や文化には興味がありました。
そして、空手をずっと習っていたから(空手歴10年、黒帯)、その影響もありました。
だから、カレンがいなかったとしても、いずれは(たぶん大学卒業したら)、日本には旅していたと思います。
Q) 日本のことは、どんな国だと思っていた?
清潔で、尊重すべき伝統が生きている国。
革新的なテクノロジーが発達している国。
(※ジェイデン君、ただいまクイーズランド工科大学でロボット工学を専攻しています)
古いものと新しいものが混在している国。
Q) 日本に到着して、最初の印象は?
とにかく人がいっぱい。こんなにたくさんの人、見たことない!
そして、家が密集していて、道も狭くて、ビルも高くて・・・
限られたスペースを効率的に使っているのが驚きで、カッコイイ!と思いました。
それと、街が明るい!
ネオンとか看板とか街灯とか。とにかく明るくて、さすがテクノロジーの国、と思いました。
Q) 人がいっぱいだったり、道が狭かったり、家が密集していたりするのは、不快じゃなかった?
いえ、不快とは感じなかったです。
それより、すごいことだと思うんです。
たしかに最初は、「あんなに家同士が近くてプライバシーは守られるんだろうか?」とか、「隣の音が筒抜けだろうし、騒音問題にならないんだろうか?」とか考えました。
でも、日本にしばらくいるうちに、人々がお互いに気を使って尊重しあって暮らしている様子が伝わってきて、「ああ、だから人がいっぱいいても、家同士があんなにくっついていても、うまく生活できるんだな」と思いました。
Q) 驚いたことは、ありますか?
小さなことかもしれないけど、すごく驚いたことがあって・・・
バスや電車に乗ったら、(飲み物を置く)カップホルダーとか、赤ちゃんホルダーとか付いていたりするんですね。
そんなもの、オーストラリアのバスや電車に付けたら、すぐ壊されると思うんです。
自動販売機もそう。オーストラリアで道端にあんなものが置いてあったら、蹴とばされたり、壊されてお金盗まれたり、そういうことが起きると思う。ほ~んの一握りだけど、そういう無謀な連中が壊しちゃうんだよ、オーストラリアだと。
それなのに、あんなにたくさん人がいる日本で、簡単に壊されそうなものが公共の場にあって、それが壊されていないってことに驚きました。
日本人はみんな礼儀正しいんだと思う。
Q) 今回は東京、ディズニーランド、京都、富士山に行ったわけだけど、一番興味深かったのは、どこ?
京都が一番興味深かったです。なかでも、三十三間堂が特によかったです。
聖なる空気をひしひしと感じました。
千を超えるという仏像(千手観音立像)が、古来から火事にも耐えて今でも大切に保存されていて。
もうその場にいるだけで、その「聖厳さ」に圧倒されて、息もできない、いや、息しちゃいけないっていうか。
その森厳さを邪魔したくないから、微動だにしたくない、息もしたくない、というか。
どう言ったらいいか分からないけど、そんな特別なものを感じました。
そして、その荘厳なものを日本の人たちが尊重し、大切にしていることもよく伝わってきて、そんな日本人の心も含めて、美しいと思いました。
Q) 今度は日本の自然について聞きます。きれいだなと思ったところは、どこ?
京都の清水寺を訪れたとき、高台から見えた山の風景が、なんともいえず、きれいでした。
ちょうど日の入りに近かったこともあって、光の加減もあったのかもしれないけど、その光景が目に焼き付いています。
それと、カレンのおじいちゃんに連れていってもらった、富士山。
御殿場の湖から見た富士山の姿は、それは美しかったです。
あんなに大きな山を見たこともなかったし、その山が湖に向こうにそびえたっている姿は、感動的でした。
もうひとつ、カレンのおじいちゃんちの近くの弘法山(神奈川県秦野市)。
ここは小さな山で帰国する前日に登ったのですが、その山頂の雰囲気が「懐かしい故郷」だったんです。
不思議な感覚なんですけど、母の実家の農場がある小さな町(クイーンズランド州ガットン)で、犬と散歩した記憶がよみがえりました。
日本とオーストラリア、全然違う場所なのに、目の前にあるものもまったく違うのに、なにか共通する「静かでピースフルな、なつかしさ」を感じたんです。
Home っていう気がしました。
Q) 日本の食べ物はどうだった?
おいしかった、全部おいしかったです!
特に、すき焼き、寿司、ラーメン、肉まん、餃子、焼きそば・・・
カレンのおじいちゃんが作ってくれた料理は、特においしかった。
もっとも、僕が喜びそうな食べ物をカレンが選別しているせいだと思うけど。
あ、わさびはスパイシーで苦手だったな。
(ちなみに、納豆、ウニにはチャレンジしていません…)
Q) オーストラリアと比較して、違いを3つ挙げると?
ひとつは、公共交通機関がめっちゃ発達していること!
オーストラリアなんか車がないと生活できないもんね。
日本を見習ってほしい。
ついでにいうと、日本ではどこでも3つか4つ、異なる言語(日本語、英語、中国語、韓国語)の案内表示があるのも、すごいと思う。
オーストラリアは英語しかない。たしかに英語は世界で公用語のように使われているけど、外国人にとってわかりやすいように、もっとさまざまな言語で案内を出したらいいと思う。
ふたつめは、歴史が膨大だってこと。
オーストラリアの国の歴史は200年そこそこしかないから。
独特の分厚い歴史がある日本は、すごいなと思う。
みっつめは、日本の人たちの礼儀正しさ。
まわりの人のことを気遣い、お互いを尊重する姿は、オーストラリア人も見習ったらいいと思う。
Q) 不快だったこと、イヤなことはなかった?
うーん、イヤなことはなかったけど・・・
そういえば、笑い話だけどね。温泉(公衆浴場)に行ったとき、ロッカー使うよね。
僕は一番下のロッカーを使っていたんだけど、荷物を取り出しているときに、同じ列の一番上のロッカーを使っている人が裸で立っていて、ふとした瞬間、目の前にブラブラぶら下がっていて…(笑)。
あと、混みあった電車のなかで、立っている女性と男性が口論しているのを見かけました。
女性のほうが男性を非難するように大きな声で抗議していた。
痴漢なのか、スリなのかわからないけど、疑われた男性は無実を証明しようとしているようだった。
たまたま、その女性の虫の居所が悪かっただけかもしれないけど。
Q) 外国人旅行者として、不便だったことはあった?
そんなに不便ってことはなかったけど・・・
デビットカードがあったら現金を使わなくて済むからラクかな~とは思いました。
そうそう、支払い時に「外税」表示なので、混乱しがちでした。
内税表示にしてくれると、わかりやすいです。
でも、日本の人はみんな親切だし、だれでもカタコトくらいは英語わかるし、歓迎されている感じはすごくしましたよ。
Q) ジェイデン君にとっては、初めての海外旅行だったわけだけど、旅の前後で変わったことって、ありますか?
世界は広いんだな!って思いました。
今までオーストラリアしか知らなかったから、日本に行くってことは、僕にとっては別の惑星に行くくらいのインパクトで。
エキサイティングな旅だったんだけど、日本以外にも世界にはたくさんの国があって、それぞれの文化や歴史があって。
そう考えると、とってもワクワクします。
世界中を旅してみたくなりました!
もちろん、日本にもまた行きたいです。
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初めての海外旅行=日本への旅、めちゃ楽しんだようですね。
インタビュアーの私、福島といたしましては、興味深いな~と思う点がいくつかありました。
1)日本人は礼儀正しい
この点、インタビュー中、ジェイデン君 何度も言及していました。
日本人は、お互いを気遣い尊重しているところが、すばらしい。
自分勝手に他人の迷惑も顧みず生きているオーストラリア人も、そこ見習え!と(笑)。
私たち日本人は「世間の目」を気にして、「常識」という中身のない制約にとらわれ、自分らしく生きることが難しいと感じているわけだけど、オーストラリアから来たジェイデン君からすると、そこが「日本のよさ」として映るんですね。
そして、その国民性の違いと、スペース(人口密度)の差との関連性を、とジェイデン君は鋭く観察しています。
国土が広く人口密度が低いオーストラリアだからこそ、自分勝手なことをしていてもスペース的に余裕があるから、そんなに問題にならないわけですね。
日本のように、スペースが限られていたら、みんなで仲良く暮らすためにはお互いのことを気遣う必要があるのかもしれません。
どちらがよいとか正しいとかいうわけではなく、それぞれの選択・好みですが、この《自他ケア・バランス》というポイントを再度見直すきっかけになりました。
個人的には、オーストラリアと日本の中庸あたりが好みです(笑)。
2)伝統文化を大切にする心
ジェイデン君がとても感動したのが「日本の伝統文化と、それを慈しみ守ろうとする日本人の心」という点が、私には興味深く感じました。
三十三間堂で感じたことを、一生懸命言葉にして表現しようとするジェイデン君を見ていて、ほんとに魂が震えるような体験をしたんだなっていうことがジンジン伝わってきたんです。
その伝統文化の重みと美しさを、肌で感じて愛でる彼の素直な感性に脱帽です。
ふと思いました。
日本の伝統文化を理解できるのは、日本人だけじゃないのですね。
その文化を今まで知らなかった外国人にも、日本文化に初めて触れた人にでも、ちゃんと伝わる、世界共通項なのだ、ということ。
そりゃ当たり前のことかもしれないけれど、私、もしかして心の底で
「こういうのは、日本人にしか分からないものだよ」
なんて思い込んでいたかも、と思いました。
よく外人さんが「日本の伝統文化は素晴らしい」とか言うけど、「ほんとのところ分かるわけないじゃん」と真に受けていなかったような気がします。
ひそかに「人種差別な自分」がいたことに気づいて、反省しました(笑)。
3)外国なのにHomeだと感じる
ジェイデン君自身も驚いたようですが、私が育った実家の山が “Home” と感じたというエピソード。
弘法山というのは、私にとっては「庭」みたいなものです。
実家は山のふもとなので、玄関出て速足なら15分くらいで山頂まで登れます。
小さい頃から、あの山でさんざん遊んだし、実家を出てからも実家に帰ったら必ず登ります。
東京で生まれ育った私の両親も、この山のエネルギーが気に入ってここに引っ越してきたといいます。
たしかに、あの弘法山には誰をも包み込むような親しみやすさ、静けさと平穏なエネルギーが流れているようで、ラースや娘たちも大好きなんですけどね。
ジェイデン君、キミもか・・・
そういえば、私もここ、レッドランド・ベイに初めてきたとき、親しみやすさ、なつかしさみたいなものを感じました。
だから、ここに拠点を置こうと決め、即決で家を買ったのです。
その家も(今、住んでいる家ですが)、Home という感じがしたから即決購入だったのです。
日本で生まれ育った私が、オーストラリアの田舎町で Home を見つけた。
・・・そういうことって、ありますよね。
旅先でたまたま訪れた地に、なつかしさや、居心地の良さを感じたりすること。
前世の記憶なのか、魂の好みなのか、理由はわからないけど、「ここが私のおうち」っていう感覚。
2)のポイントと似ていますが、「日本が好き」っていう外国人にも、そういう感覚があるのかもしれないですね。
外人だから、よそ者だからと差別しないで、そう感じる人がそこに暮らせるような社会になったらいいな、と思いました。
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ジェイデン君、インタビューに協力してくれて、どうもありがとう。
おかげで、いろんなことに気づかせてもらいましたよ♪